”Vården i Fokus”への掲載記事、「WoW – なんという依存症!」
私が最初にテレビ/コンピューターゲーム依存症に出会ったのは数年前のことになる。それは回復中の薬物依存症の患者たちをストックホルムの群島にある島に連れて行った時のこと。暖かくとてもきれいな春の日に、リハビリも兼ねた釣りの旅行をさせることが目的だった。この治療方法はとても順調で依存症からの回復の兆しもみえていたところだったのだ。
その島は風力発電、ソーラー発電と電気の供給源が限られていた。このような理由から、私たちは事前にクライアントに電力を大量消費するような電化製品はおいてくるように指示しておいた。しかしあるクライアントがとてつもなく大きなテレビとテレビゲームのコントローラーなどがぎっしり詰まった鞄を一緒に持っていくといってきかなかった。可笑しくなって私たちは笑い出してしまったが、彼が車を降りた後のボートまでも全て自分で運ぶということでひとまず収まった。島に着いた後、キャビンをクライアントに案内する前に、私たちは散歩にでかけた。春の日差しが暖かく輝き、すべてがうまくいっているようにみえた。彼らを残し本島に戻ってきた後、何か問題はないかチェックするために島のクライアントたちに電話を入れた。すべて順調にいっているとのことだったが、一つだけ問題が発生したというのだ。あのクライアントが持ってきたテレビに必要な12ボルトのアダプターがないため、テレビを島で使用することができないという。もちろん専門の技術者を呼べば接続可能とのことだが、それでも数日かかるという。その後起きたことは、かの「禁欲症状」を彷彿させるものだった。繋がらないテレビをめぐり、リハビリプログラムであるこの旅行をキャンセルしたいという議論が電話越しで繰り広げられたのだ。最終的に事は丸く収まったが、これは一体どういうことなのだろうと、w足しは頭を抱えた。そして、私の直感がこれは全く新しいタイプの依存症状なのではないだろうかと警報を鳴らしたのだ。
その出来事のずっと後になって、ゲーム依存症が多くの家庭での深刻な問題になっているということをメディアを通して知った。学校の無断欠席、口論、暴力までもが「コンピューターゲーム」をめぐり家庭内で繰り広げられていた。興味本位でスウェーデンのコンピューターゲーム依存症に関して色々調べていくうちに、保護者のネットワークであるFair-playをはじめ、セラピストのオーヴェ サンドベリなどが働く様々な団体、企業とコンタクトを持つことになった。更にはゲーマー自身の団体である、Goodgameにまでたどり着くことが出来た。
政府関係では社会問題に特化した国立公共健康機関と社会保険省とコンタクトを取ることが出来た。これらを調査すると、コンピューターゲームの及ぼす「悪影響」(コンピューターゲーム依存症ということになるのだが、彼らは悪影響と言及するにとどまっている)は年々もの凄いスピードで増え続けているにも関わらず、研究不足により全体像の解明がまだなされていないということだった。
これらの現状は私の研究意欲をかきたてた。新しいことに挑戦することが好きな私は、保護者支援グループを設立し各家庭や社会団体に治療サービスを提供し始めたのだ。いくつかの既存の治療戦略はすぐに適応、使用することができ、価値のある結果を残すのにそう時間はかからなかった。保護者支援グループ内では、保護者が互いにアドバイスを交換し、支援と助け合いの糧になるということが証明された。これらの保護者はコンピューターゲーム(多くの場合がワールド オブ ウォークラフト)によってゲーマーの生活が支配されてしまっているという共通の経験を持っている。このグループの間では、禁欲症状、コントロールの不可、耐久力の増加、拒否や拒絶、学校での勉学意欲の低下、家庭内暴力、犯罪などが基本的な症状としてあげられた。依存症を20年に渡って研究してきた私からみて、これらの症状は他の様々な種類の依存症と類似していた。彼らの多くは他の依存症と似た症状の進展もしていた。しかし、コンピューターゲーム依存症には他の依存症には見られない特別な相違点もあるため、他の依存症とは別に治療されなければならない。私たちは生活の全てをコンピューターゲームに捧げてしまう若者たちに出会った。体を動かすこと、太陽の光、そして「リアルライフ − 現実世界」でのコミュニケーション欠如がおそろしい状況をえがきだしていた。これらの状況はもちろん依存症以前のものである場合もあるが、コンピューターゲーム依存症が全ての問題に繋がっているように考えられる。本来、楽しく教養的でイノセントであるはずのものが、なぜこのような深刻な事態を招いてしまうのか。もっともらしい理由として、アクションゲーム特有の敵を倒す満足感や、オンラインゲーム特有のグループとしての一体感があげられる。なかには、現実世界から逃れ、忘れるためにゲームに没頭するゲーマーもいる。理由はどうであれ、コンピューターゲームに異常なまでの固執をしめし、食事や睡眠など日常生活の基盤を無視してしまうゲーマーも少なくはない。
私たちのネットワークはソーシャルワーカーを始め、心理学者、医学者と多岐に渡っています。この多様性が依存症の複雑な状況で最大のメリットなのです。モチベーションカウンセリングやアウトドアでのアクティビティなどがメソッドとしてあげられます。主に力を入れているクライアントは青少年であり、保護者も交え、彼らのすべき役割、家庭内でのコミュニケーションを指導しています。青少年のクライアントは特に、保護者と彼らの関係を回復し、更に向上させることが重要となってきます。保護者やゲーマー本人がサポートをうけるための電話相談も解説しました。また、この電話相談開設により、直接カウンセリングセンターに出向くことなく、どこに住んでいても世界中からサポートやアドバイスが受けられる体制が整っています。依存症の異なるリスク要因を見極めるためにもこの分野での研究プロジェクトも始動しています。あのストックホルムの群島で起きた出来事をうけ、私たちはコンピューターゲーム依存症研究の第一人者として日々努力を重ねています。
スベン ローレンハーゲン
著者は1959年生まれ。ソーシャルワーカーとして青少年ケアやソーシャルサービスに長年携わる。また、機関に属さないプライベートなケアの先駆者として知られている。1991年に非営利団体スティフテルセン青少年福祉を設立後、マネージャーとして、個人や企業向けにサービスを提供し続けている。